旦那の友人に抱かれ、感じてしまう私。背徳感が二人の理性を奪い取った過ちの夜 (ページ 2)
「久しぶり!」
「よっ!」
笑顔で手を軽く振った海翔は、全く変わらないままだった。六時の待ち合わせ。仕事帰りのスーツ姿が引き締まった長身の体に似合っていて、とにかく印象がいい。
数年ぶりにハイヒールを引っ張り出して、タンスの奥に眠っていたアクセサリーを着けてきた自分の姿が、海翔にはどう映っているのだろう。
「相変わらず美人だな」
「いきなり褒めてくれるの?気分がいいわ」
変わらないのは外見だけではないのだ。こうして、いつも海翔は美咲を誉めて、気分をあげてくれる。
ワインを開け、ゆっくり料理を楽しむ時間。美咲はまるで大学時代に戻った気分だった。海翔が相変わらず聞き上手で、美咲のお喋りが止まらない。
二時間ほど時間が過ぎたけれど、まだ夜は長いし美咲はとても帰る気分ではなかった。
「飲み足りないね」
「そうか?俺は結構いい気分だけど。まだ飲む?」
「うん!」
「俺は美咲にとことん付き合うから安心して」
笑ってそう言う海翔はさりげなく美咲をエスコートをし、二人はそのまま上階のバーへ移動した。
金曜の夜だからだろうか。バーにはカップルが数組いる。宿泊客なのか、そうでないのかはわからないけれど、アルコールの入った美咲には目の前のカップルがこれから愛し合うようにしか見えない。
「私たち、カップルに見えるかな?」
「さあ、見えてもいいんじゃない」
隣同士に座ると、また海翔が違って見えた。腕時計をはめた手首は血管が浮き出て男らしい。でも、指は細長くて綺麗だ。
海翔が着けているネクタイは、奥さんの趣味だろうか。夫婦円満なのだろうか。そういえば、海翔から自分の話を聞くことがない。
会社の女性社員から言い寄られたりしていないのだろうか。いいパパで近所でも評判なのだろうか。今でも奥さんと夜の営みがあるのだろうか。
美咲の頭の中には次から次へと海翔への疑問が湧いていた。だから、そんな好奇の目で海翔を見ていたのだろう。
「何?俺に言いたいことありそうだけど」
「いや、海翔って大学時代モテてたなって」
「その時に言ってくれればよかったのに」
「なんでよ、モテてること感じてなかったの?」
「俺、大学の頃はお前と付き合いたいと思ってたんだぞ」
「そんなの噓でしょ」
「お前は俺なんか見向きもしなかったらさ」
「変なこと言うよね」
久しぶりのお酒に、少し海翔も酔ったらしい。海翔も珍しく冗談を言うんだと思ったけれど、どことなく本音のようにも受け取れる。
海翔は真面目だから、当時の美咲には物足りなかった。
でも、こうして海翔の話を聞くと、もしも海翔が先に告白していたら、この関係性はどうなっていたのだろうと思ってしまう。
「お前、あいつと今でもそういうことあるの?」
「何を?!バカなこと聞かないでよ」
美咲は笑って答えたけれど、実際はもうずいぶんと長い間セックスどころかキスも、ハグもしていない。どちらかが拒んだわけでもなく、ただ何となく気が付けばセックスレスだっただけで、仲が良い夫婦ではあるからだ。
「美咲は今でも色っぽいし、声かけられたりしないか?」
「するわけないでしょ。私たちもう中年だよ!」
海翔の言葉は素直に嬉しいけれど、こんな話題を普段誰かとすることもないので戸惑いは隠せない。しかも相手は真面目な海翔だから、妙に不謹慎にも感じる。
「ねぇ、色っぽいってどういうこと?」
美咲も少し酔いが回り、このまま海翔ときわどい話をしたら楽しいだろうと思った。
「お前、自分がモテてた理由は何だと思う?}
「私?モテてた記憶はないよ。顔も普通、性格はきついし、つきあってすぐに結婚したしね」
「そうだよ、めちゃくちゃ結婚を決めたのが早かったよな。ショックだったなー」
「だから、そんなこと言わないでって」
「部屋、来る?」
「えっ?」
「こんな話、こんなところで盛り上がれないだろ」
海翔らしい誘い方だった。断る余地を美咲に与えてくれているのも、冗談として誤魔化すにしても、何もかものバランスが最高だった。
「ちょっとだけお邪魔しようかな」
美咲には下心がはっきりとあった。誰でもいいから思い切り抱きしめて欲しい気分で、きっと海翔は断らないだろうという確信があったのだ。
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