優しすぎる彼氏を嫉妬させたかっただけなのに、執着を感じる激しいえっちで気絶するまで愛されちゃって!? (ページ 2)

「た、ただいま〜」
「おかえりアキちゃん。突然残業なんて大変だったね」
「あー…まぁ、一時間くらいだったし…。むしろ待たせちゃってごめんね?」
「気にしないで。ご飯作っといたよ」
「わ、ありがとう」

 何でもないような顔で会話を続けるが、内心はドキドキだ。だって本当は残業なんてしていないのだから。
 罪悪感やら好奇心やらが顔に出ないように「今日のご飯は何かな〜」なんて言いながら、私はさり気なくヒロくんの横を通り過ぎる。

 もしもここで、何か言われたら…!

「アキちゃん」

 !!
 …き、気付かれた…?

 実は私は今日、わざわざ店まで行って男物の香水をつけてきたのだ。
 私の細かい変化にも気付くヒロくんなら、きっとこの香りにも気づいてくれるとは思っていた。ここまでは予想通り。

 問題はこの後。
 ヒロくんは一体、どんな反応を…?

「ごめん、今思い出したんだけどご飯炊けるまでもう少し時間あるんだった。先お風呂行ってきたら?」

 …え?

「……あ、うん。わかった」
「ごめんね」

 申し訳なさそうに眉尻を下げるヒロくんはいたっていつも通りに見える。

 あまりつけすぎても不自然だからと移り香に思われる程度のつけ方をしたつもりだったのだが…もしかして、香水の量が少なすぎたのだろうか。

 …うん。これはきっと、嫉妬を狙うなんてよくないということに違いない。
 一回駄目だったなら大人しく諦めよう。

 脱衣所でそんなことを考えた私は、ご飯のときにヒロくんに今回のことを正直に話して謝ろうと決意したのだった。
 …が。

「ひゃっ!?」

 入浴を終え脱衣所に戻ると、お風呂場側からは死角になっている位置にヒロくんが立っていて。

「え、な、どうしたの…?」

 いつも通りに微笑むヒロくんにそう問うと、ヒロくんは突然私に口づけた。

「んっ!? …っ、む♡ぅ…っ♡んぐっ、〜ッ…♡」

 呼吸を奪うように深く舌を絡められ少しえずきそうになるが、それ以上の快楽で思考を塗り潰されて頭が回らない。
 鼻呼吸をする余裕もないほどに単純思考しかできなくなった頭で選べたのは『逃げ』だけで、けれどどうにかヒロくんから離れようとヒロくんの肩を押しても、私の後頭部を大きな手のひらで押さえつけられている状態で逃げられる筈もなくて。

 苦しい。死ぬ、しんじゃう。きもちいい。

「──ッは、ゲホッ!かっ、ひゅ、っは、っは…!」

 まともな思考が溶けて、意識すら霞みかけたそのとき、ヒロくんはようやく私を開放してくれた。
 思わず崩れ落ちそうになった私を抱き寄せるような形で支えてくれたヒロくんにお礼を言う余裕すらないが、そもそもの原因はヒロくんにあるのだからお礼を言う必要はないだろう。

 と、不意にヒロくんが静かな声色で告げる。

「服、着なくていいよ」

 思わず見上げたヒロくんの表情は、いつもの微笑みが嘘のような無表情だった。

 

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