憧れていたクールな王子様キャラの彼は、嫉妬深くてセックスで私を縛る男だった (ページ 2)
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「こんにちは!」
春らしい陽気の午後、葵は数年ぶりに慶一郎と再会した。
「葵ちゃん、久しぶり。大人になってるじゃん!」
「うん。もう二十五だし」
「そっか、そうだよな」
慶一郎は全く変わっていなかった。油で汚れた作業着を着ていても、サラサラの髪と色白の肌から王子様感は溢れ出ていたのだ。
そんな王子様が、葵の車をバックで作業スペースにささっと動かし、車の下に潜り込んで作業をしている。
葵は四十分ほどの作業の間、そんな慶一郎をじっと見ていた。
「お待たせ、終わったよ」
「ありがとう。また家に遊びに来てよ!お兄ちゃんも暇してるから」
「今日行くけど」
「そうなの?」
「ああ。聞いてないか?」
「何にも。じゃあ私も待ってる」
「うん、じゃあまた夜な」
葵は嬉しかった。憧れの眼差しで見ていた先輩と時間を共有できるのだ。自宅に帰り、そわそわし始める葵を兄は不思議に思っていたかもしれない。
「今日は私も一緒に飲む!」
そう言って部屋から出ない葵を兄は笑っていた。
慶一郎は六時半ごろやって来た。
「こんばんは、お邪魔します」
「あー、慶一郎くん!今日はありがとう」
ベージュと白でまとめられた爽やかなコーデは、とても似合っていた。細身のイメージだったが、目の前の慶一郎は筋肉質でがっちりしている。
「おー!久しぶり!入って」
兄も玄関に来る。大人三人がぞろぞろと部屋へ上がり、早速乾杯を始めた。
「乾杯!」
兄と慶一郎も久しぶりらしい。同級生の近況報告をしあう二人はとても楽しそうだ。葵は慶一郎の横顔をまじまじと見つめていた。
昔と変わらない、綺麗な横顔。切れ長の目と、薄い唇、柔らかそうな耳たぶ、首筋のラインまでが色気を放つ。
決して中性的ではないけれど、綺麗という言葉がぴったりだと思った。
慶一郎はよく喋った。昔は彼女が隣にいたから、無口な印象だっだのかもしれないが、今日は兄と二人でずっと喋っている。
時間が過ぎ、お酒の量も増え。少しずつ話題は男と女の話に変わっていた。
「じゃあ、慶一郎も結婚願望はないのか」
「今はね」
「女は?」
「いないよ」
その答えを聞いて、葵はすかさず切り込んだ。
「慶一郎くんの好きなタイプは?」
「浮気しない女」
慶一郎は即答した。
「浮気なんて女はしないでしょ?」
「ゼロとは言い切れないじゃん」
「そうだけど…」
この時は葵はまだ知らない。慶一郎が彼女の浮気で破局したことを。
「じゃあ葵ちゃんのタイプは?」
「私は一途な人がいい!」
「一途って言ってもいろいろとタイプがありそうな気もするけどね」
「束縛してほしい」
「そうなの?」
「うん、俺の物って感じをガンガン出してほしい!」
「お前は相変わらず単純だな。また変なやつに捕まるぞ」
兄が笑いながら立ち上がり、トイレに行った。
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