【彼目線】飲み会から帰宅した彼女に翻弄される。無口な彼だけど心の内では彼女を溺愛しているのです。 (ページ1)

「おせぇ」

0時30分を過ぎた時計を見つめてから、手に持ったスマホに視線を移した。

LINEもメールも何回見ても来ない。

『終電までには帰るよ』

今朝、ニコニコしながらそんなこと言ってたが、終電はもうとうに終わってる。

まぁ、コドモじゃねーし。大丈夫だと思うけど。

気になるのは、飲み会の帰りって事だ。そんなに強くないくせに周りの雰囲気に飲まれてガンガン飲むのがあいつの悪いところだ。

まぁ、でも。
久し振りの飲み会を楽しみにしてるのを見たら、あんまり釘を刺したくなかった。

溜め息と共に煙を吐き出してから、吸いかけの煙草を消した。
悶々とした頭を冷やす為にも、とそのまま浴室へと足を運んだ。

丁度風呂から上がった所で、インターホンが鳴る音がして、体を適当に拭いて浴室を出た。

ん、インターホン?

「はい」

『あ、大輔!ただいまっ鍵見つからないんだ、開けて?』

エントランスかららしい菜奈の浮かれた声に、少しムッとしながらも安心したのは事実だ。

「そっち行く」

濡れた髪をタオルで大雑把に拭いてから、スウェットに着替えてエントランスまで菜奈を迎えに行く。

あのテンションの高さから、相当飲んだに違いない菜奈を一人にさせたくないのと同時に、早く顔を見たかった。

そんな自分の菜奈に対する態度に苦笑しつつエレベーターに乗り込んだ。

エントランスの扉を開けようと手をかけた時、ガラス越しに菜奈の姿が見えた。

うつらうつらとした表情で、スーツ姿の男に肩を抱かれ、と言うかほぼ胸にしなだれ掛かってる姿だった。

急いで扉を開け、二人に近寄ると、

「あ・・大輔!・・ごめんね、寝てた?」

「いや、風呂入ってた」

俺を見つけると、嬉しそうに駆け寄って来た菜奈を一瞥してから、入り口で立ち尽くす男に視線を移した。

男は気まずそうに、ぺこっと頭を下げてから何かを言いかけようと口を開いた時、

「あ、同僚の子なんだ。終電なくなっちゃって、方向同じだからってタクシーで相乗りしてきたの。」

菜奈が悪びれた風もなく、へへへっと笑う。

こっちの気も知らないで、とか酔ってるにしても無防備すぎとか無事に帰ってきて良かったとか。

色んな感情が沸き起こって、なんかイラついた。

そして、呆れた。

菜奈の頭を軽くコンと小突いた。

「すみません、迷惑かけて。菜奈、礼言って」

「ごめんね、ありがとう。」

俺の怒りを感じただろう菜奈が、途端に大人しくなり、同僚の男に申し訳なさそうに頭を下げた。

「あ、いや・・。じゃ、失礼します。」

と言いながら、男はエントランスから逃げるように去っていった。

溜息をついて、菜奈を見下ろすと俺のスウェットの裾を掴んだまま下を向いていた。

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