借金返済のために私が売られた相手が、まさかの幼馴染だったお話 (ページ 2)

「ん…ッ、…ぁ、ぅ…」

抜けていく彼の余韻に悶える私の頭を、優しく撫でてくれる。
その手付きはどこまでも優しい。

「はぁ…やっと、一緒になれた…友奈ちゃん」

「ぇ」

やっと?だって私たち、今日初めて会ったんじゃ。
混乱したまま彼を見ると、困ったような苦笑で返された。

「気付いてくれるかなぁ…ってちょっと期待したんだけど、やっぱ厳しかったか」

「気付く?え?」

「昔さ、近所に住んでた男の子…覚えてない?」

昔?近所に住んでいた…男の子…。

「…っもしかして、彰くん!?」

そんなまさか、と思うけれど、記憶の中に私の後ろをついてきて遊んでいた男の子の顔が浮かんだ。

「よかったぁ、覚えてくれてた」

でも、なんで。という疑問に彰くんがゆっくりと丁寧に答えてくれた。
資金繰りに困っているのが私の両親だと知って、手助けのために融資してくれたこと。
まさかその後蒸発するまでになるとは思わず、それらをチャラにするため私を受け入れたこと。
子供の頃に私の事が好きで、融資の際の資料で今の私を見て、再びあの頃の気持ちが忘れられなくなったのだという。

「こんなやり方で…ごめん。でも俺は…友奈ちゃんが本当に好きで、路頭に迷うくらいなら俺が…って思ったんだ」

「彰くん…」

「でもこんな、囲うみたいなこと許されないよな…本当にごめん。借金の事も、今後の事も無しにして、もし勤め先を探すならうちで融通もする…俺に会いたくないならそうするし…」

しゅん、と耳を垂らした子犬のようにさえ見える彼は、何だか構いたくなる様子で。
そういえば昔からいつも、声をかけるのは私からだったなと懐かしくなる。

「その…私ね?大人になった彰くんの事全然知らないの」

「それは…うん」

神妙な顔で頷く彼の顔色は青い。
そうだ、彼は不安がりな性格だった。

「だからこれから、知っていけたらなぁ…なんて思うんだけど…ダメ?」

「え?…えっ!それっ、て」

だって、彼の優しい触れ方に、正直胸が高鳴る自分がいたのだ。

順番も何もかもおかしいけれど。
そんな始まりも悪くないんじゃないか、なんて。

「…いいの?俺、本気になったら手放してあげられない。今ならまだ…」

「ふふ。昔から、手つなぎをほどくの大嫌いだったもんね」

そう言いながらゆっくりと手を繋ぐ。

「もう一度、よろしくお願いします」

驚いた彼の顔がみるみるうちに泣き笑いへと変わる。
そんな彼を、ああ愛おしいなと思い始めていた。

-FIN-

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らさねぬぉ

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