旅の恥はまさに掻き捨て!マッチョな添乗員との禁断の夜に喘ぎ続けた私 (ページ 2)

 二時間ほど過ぎて、奈美恵がまたロビーを通ると、添乗員がいた。

「添乗員さん」

「はい」
 
 びくっとして添乗員が振り返る。書類の上に置いていたペンが転がった。奈美恵はペンを拾って渡す。

「ありがとうございます」

「大変ですね。まだお仕事ですか?」

 後から聞くと、この時彼は、前に担当したツアーのクレーム対応に追われていたらしい。

「ええ、楽しんでいただいていますか?」

「はい、とても」

「よかったです」

「あの…、添乗員さんは私とバーとか行けないんでしょうか?」

「私ですか?ダメですけど、何か?」

「少し話相手が欲しくなって…」

 奈美恵は思わずそう答えていた。というより、目の前のオーバーワークで疲れ切った男性が、なんだか愛おしくなってしまったのだ。

 ところが、客の誘いを受けるのはご法度。何とか客の機嫌を損ねないよう断ること。そうやって仕事をしてきた彼が、なぜか奈美恵の誘いを受けていた。

「僕の部屋でよければ…」

 他の客の気配はない。そのまま奈美恵は添乗員の後について行った。

「部屋のタイプが違いますよね」

 確かに奈美恵の部屋よりは狭い。景色も少し違う。床に無造作に置かれたまだ開けてもいないキャリーが彼の忙しさ証明している。

「添乗員さんをなんとお呼びしたらいいですか?」

「優斗です」

「素敵なお名前ですね。じゃあ優斗さんで。私は奈美恵です」

「奈美恵さんですね」

 奈美恵は自分の積極性が信じられなかった。旅の恥は掻き捨て、ということだろうか。

 とにかく、奈美恵も誰かと話がしたかったのだ。それは優斗も同じだったようだ。いけないことをしている背徳感が、妙に優斗を男っぽく、大人っぽく見せる。

 ばれたらクビだろうし、今まで耐えてきた経験も無意味になるのだが、なぜか奈美恵のペースにのってみたいと魔が差したようだ。

 お酒の力も借りて、二人の話は弾んだ。少しずつ、男と女の話題にもなっていた。

 奈美恵の憧れていた先輩に似ていることを伝えると、優斗が意地悪な表情で聞く。

「その先輩とは何もなかったんですか?」

「ないですよ、だって好きすぎたから」

「キスも?」

「ないない!」

「じゃあ、本当に似ているのは外見だけなんですね」

「うん、まぁ…」

「せっかくですし、しますか?」

「えっ?」

「キスですよ」

「あぁ、キス…」

「奈美恵さん、その先もしたい感じですか?」

「いや、そういうわけでは…」

 奈美恵は全く否定をしなかった。だから、優斗が唇を重ねたとき、ぎゅっとしがみついたのは奈美恵の方だった。

「シャワー浴びましょうか」

 頬を上気させて奈美恵が頷く。このまま部屋に戻ることもできるのに、奈美恵はすっかりその気になっていた。

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せさゃすね

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