バイクの後部座席からツンデレ彼氏に密着する私。じんじんと下半身が疼き始めるのはお互い様! (ページ 2)
海岸沿いのコンビニに健太がバイクを停める。そこは海がとても綺麗に見えるスポットでも有名な場所だ。
ナンパが盛んだという噂もあり、夏は海水浴の客で賑わう。
健太がすっと愛実の手をとり、バイクから下ろす。
「ありがとう」
ヘルメットを脱ぎ、ただ立っているだけなのに、まだエンジンの振動が下半身に残っているような感覚だった。
「うわー、海だ!」
思わず愛実がはしゃいでしまうほど、キラキラと光る水面が眩しい。
「何か飲む?買ってくるよ」
「私は大丈夫」
ずっと健太にしがみついていたからか、こうして会話をすることが少し恥ずかしい。
健太はお店に入り飲み物を買って出てきた。
「いいお天気だね」
愛実は、ごくごくと水を飲む健太の喉仏のラインに見とれていた。ウエスト回りは無駄な贅肉が一切ないように感じたが、上半身はどちらかといえばがっちりしている。
「何?じっと見て」
「別に…。喉が渇いてたんだなって」
「海の近くまで行ってみる?」
「うん」
「もう自分で乗れる?」
ひょいっと足をあげる愛実を、まるで子供がオモチャで遊んでいるかのように健太は見守っていた。
愛実が健太の腰に手を回す。それはもう、二人の関係が深くなってもいいという愛実なりの合図だった。
海に着いた。
海の匂いと、波の音。そんなロマンチックな状況なのに、健太はすたすたと愛実の前を歩いている。
さっきまで密着していたのだから、手を繋いでゆっくり海岸沿いを歩くのだと期待していた愛実は、少しがっかりしていたけれど、付き合っていないのだから当然なのかもしれない。
「バイク、最高かも」
「そう?よかった。嫌じゃなくて」
「またどこか行きたいな」
「そうだね」
さりげない愛実の言葉を、健太は否定しなかった。
先に歩く健太の後ろ姿を見ていると、思わず抱きつきたくなる。決して愛実のことを嫌いではなさそうだけれど、健太は何かとあっさりしている。
お喋りは好きだと思うけれど、グイグイくることがない。でも、なぜか一緒にいたくなる。
ー私はこのまま付き合いたいんだけどな。
二人のこれからの関係を考えれば考えるほど、愛実は健太の気持ちをはっきりさせたいと思った。
「ねぇ、健太くん、私と付き合わない?」
冗談にも変えられそうな、そんな明るく軽めの口調で愛実が後ろから健太に言ってみた。
くるっと振り向いた健太が言った。
「いいよ」
「いいの?」
「うん、嫌だったら今日も会ってないし」
甘い言葉はないけれど、愛実は健太の即答が素直に嬉しかった。
「よろしくお願いします」
握手を求めた愛実の手を、健太はしっかりと握り返した。大人の恋愛の始まりはこんなものなのかもしれない。
不思議なカップル成立の瞬間な気がしたが、帰りのバイクは明らかに二人の密着に意味が生まれていた。
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