憧れの教授と乗っていたエレベーターが突然停止?!非日常の中で燃え上がるふたり!
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憧れの教授と乗っていたエレベーターが突然停止?!非日常の中で燃え上がるふたり! (ページ 1)
さっきから、エレベーターはうんでもすんでもない。
桃子はそっとスマホの画面を見た。
すでに2時間は経っている。
「…くそ。つながらないな」
天野は扉の横の緊急用の通話ボタンから指を離した。
そんな天野を桃子は不安気に見やる。
ここは大学の研究棟のエレベーター、桃子はこの大学の四年生で、天野は教授だった。
桃子は天野の修論指導のクラスをとっており、今日はその授業が終わったあと、桃子は天野とエレベーターに乗り合わせ、一階に降りる途中でいきなりエレベーターは大きく揺れて止まった。
電気は点いたままなので停電が原因ではなさそうだが、携帯電話はなぜか圏外、非常用の備え付けのボタンで外部に連絡はつかず、エレベーターは停止したまま動かない。
授業は夜間にあり、終了して研究室を出たのは9時を過ぎていたので、エレベーターの中も次第に冷えてきていた。
桃子がぶるっと体を震わせると、天野が着ていたコートを脱いで寄越してきた。
「これ着てて」
「でも…」
「いいから」
「…はい」
ありがとうございます、と言って桃子はコートを受け取った。
羽織るとコートにはかすかに天野の体温が残っており、少しだけタバコの匂いがした。
そっとコートをかきよせると、小柄な桃子は天野のコートに包まれるようになる。
天野の方を見ると、天野は目を閉じて壁にもたれていた。
才能を買われて若干32歳で教授。
整った顔立ちの中の長いまつげが頬に影を落としていて、少し疲れているようだった。
沈黙が落ちる。
「本当にいったいどうしたんでしょうね」
「さっぱり分からない。せめて連絡がつけばいいんだが」
桃子はずるずると床に座り込んだ。
不安のあまり涙がでてくる。
鼻をすすっていると、天野が横に腰をおろして、桃子の肩に手のひらを置いた。
「大丈夫。きっと助けがくるから」
置かれた大きな手のひらが温かく、桃子はほんの少し安心した。
そしてもう少し安心したくて、桃子はわがままを言った。
「あの、くっついてもいいですか」
「え」
「その、寒いし」
「あ、ああ。」
桃子は天野に体を寄り添わせた。
体温がじかに伝わってきて、桃子はすっかり安心した。
「すみません。なんか不安で」
「いや、いいけど。でも誰か人が来たら…」
「人が来たら離れますよ」
桃子は天野のワイシャツに頬を擦り寄せた。
柔軟剤とタバコの匂いがした。
「先生、もしもここから出られなかったらどうします?」
「出られないということはないだろう」
「実は外では核戦争とか、大災害が起きてて、もう誰も助けに来ないとしたら」
「そんなことは…」
「もう私達以外、だれも生きていないとしたら」
天野が桃子を見る。
桃子はその天野の視線を受け止める。
「先生、私先生のことずっと好きだったんです」
桃子は天野に顔を寄せてキスをした。
天野の瞳が驚いたように見開かれる。
「今だけでいいんです。お願い」
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