木から降りられなくなった猫を助けたら、異世界で猫耳イケメンに溺愛されちゃって… (ページ 6)
それから私は、森の中の一軒家でルノにお世話されながら、とろとろに甘やかされる夢のような2週間を過ごした。
ルノが発明したという瞬間移動装置は、2週間経つと、使えなくなってしまうらしいので、帰らなければならない時がきたのだ。
「あっという間だったね、ミア」
「うん」
もうルノに会えないと思うと、悲しい。
でも、よく考えたら元の世界にもルノはいるはずだ。
「ねえ、ルノは私の世界のルノのこと、知ってる?」
「兄じゃないってことしかわからないけど、でもミアの近くにいると思う」
「そうなんだ」
その人に会ってみたいけど、どうやって探せばいいんだろう?
家の外に出ると、玄関先に白いマルが描かれている。
「じゃあね、ルノ」
「僕もすぐに妹を迎えに行くけど、向こうでは猫になっちゃうから」
お別れのキスをして、マルの中に入った。
うわあああああ…。
*****
気がつくと、私はアパートの裏の路地で倒れていて、猛スピードの自転車が近づいてくる!
「きゃああああ!」
急ブレーキのショックで、自転車が倒れ、乗っていた人の眼鏡が吹っ飛ぶ。
「ご、ごめんなさい」
「こっちこそごめん。怪我しなかった?」
自転車に乗っていたのは、時々大学の研究棟の辺りで見かける、ボサボサ髪に分厚い眼鏡をかけた人だった。
おそらく大学院生なのだろう。
「大丈夫です」
「ところで、人を探してるんだけど」
彼は、私のフルネームを告げた。
「それ私です」
「え?あの凄いレポート書いた学部生?」
「は、はい」
書いたのはパラレルワールドでニャーベル賞を獲ったルノの妹だけど。
「うちの教授が探してるんだ。あのレポート、日本語がまったく意味不明なんだけど、数式を辿っていくとんでもない発見がされてて…」
うわ、それは困る…。
その時、ふわっと吹いてきた風に、彼の前髪が舞い上がった。
え?
うそっ。
ルノだ!
「あの、こんなとこでなんだから、家でコーヒーでも飲みながらお話しませんか?」
立ち上がり、自転車を押す大学院生のルノとアパートの正面に向かっていると、オッドアイの白猫と、可愛らしい黒猫が仲良さそうにアパートの裏手の路地に向かって歩いていった。
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