森で助けた男の人が実は狼だった!?狼が発情期を迎える満月の夜に、捕まってしまった赤ずきんの私
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森で助けた男の人が実は狼だった!?狼が発情期を迎える満月の夜に、捕まってしまった赤ずきんの私 (ページ 1)
―悪い狼に食べられてしまうから、決して森の奥に行ってはいけないよ。
この辺りに住む子どもたちは、そう言い聞かされて大人になる。
村の外れにあるこの森が「迷いの森」と呼ばれるようになったのは、もう何十年も前の話だった。
あるときは木苺を摘みに行った村娘が、あるときは伴侶を失ったばかりの未亡人が、またあるときは狼に挑んでやるのだと意気込んでいた屈強な大男が。
森の奥深くへと迷い込んでしまった彼らは、そのまま二度と家に帰ってはこなかった。
そんな悪名高い「迷いの森」の入り口。今は亡き祖母から受け継いだ素朴な木製の小屋で、私、ルチアは暮らしている。
「それじゃあ行ってきます、おばあちゃん!」
お気に入りの赤色のケープを被り、バスケットを引っ提げて家を出る。天国の祖母への挨拶は欠かさない。
足取りは迷いなく、一直線に森の中を進んでいく。もう何年も続けていることだから、例え目をつぶっていたって辿り着ける。
私がわざわざ「迷いの森」に居を構えている理由は他でもない。「迷いの森」には、ここでしか育たない薬草の群生地があちこちにあるからだ。
祖母は、村の人たちから慕われている高名な薬師だった。
森の中を歩きながら、祖母と暮らした日々を思い出す。祖母の薬草の知識は驚くほどに膨大で、生き字引と呼ぶにふさわしい人だった。
私は、そんな祖母の薬師業を二代目として受け継いだ。
森の中を歩き回るのは怖くないか、と村の人たちに聞かれたことがある。正直不安にならないと言えば嘘になるけど、要するに森の奥まで行かなければいいだけの話だ。
私には、祖母に教えてもらったこの森で生き抜くための知恵がある。狼なんて怖くない。大丈夫だ、きっと。
木苺の林を抜けると、少し開けた場所に出る。この先が、小屋から一番近い薬草の群生地だ。
…そこに、木の幹にもたれかかっている見慣れない人影があった。
こんなところに人がいるのは初めて見た。おそるおそる近づいてみると、それはどうやら男性で、しかも気を失っているようだった。
「あの…大丈夫ですか?」
声を掛けてみても当然反応はない。ぱっと見た感じでは、特別大きな外傷があるというわけではなさそうだ。
この森の薬師として、彼をこのまま放っておくのは忍びない。かといってこの体格差では、担いで運ぶなんてとてもできないし…。
そんなことを思案しているうちに、彼がおもむろに目を覚ました。
線の細い黒髪の隙間から、深い緋色の瞳がのぞく。この辺りではなかなか見ない色合いで、綺麗な色だ、と率直に思った。
「ねえあなた、足は大丈夫?歩ける?」
目を覚ましたばかりだからか、少し足取りがふらついている彼を支えながら、私たちは小屋に戻った。
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