終電を逃した職場の後輩を家に泊めたら、優しい雰囲気から一変して『男』を意識させられる話 (ページ 4)

翌朝。
まだ日も登っていない時刻に目が覚めた私は、目の前にある木村くんの寝顔にビクリと体を震わせてしまう。
(そうだ私、昨日…)
そうして思い起こされる情事の数々に、朝から私の顔はリンゴのように真っ赤になった。
内壁を擦られるだけで生まれる快感。
達しても碌(ろく)に休憩をもらえず、ひたすらに求められて。
仕舞には彼から落ちてくる汗まで愛おしく思ってしまって、ただただ2人で互いの体を貪りあう…そんなセックスだった。

これからどうしよう。
想いをきちんと告げる前に、体の関係を持ってしまった。

「なにを考えてるんですか?」

声を掛けられ驚いて顔を上げると、木村くんの焦げ茶色の瞳が面白そうにこちらを見ていた。
あれこれ思考を巡らせていて、彼が起きたことに全然気が付かなかった。

「おはよう…起きてたなら声掛けてよ」
「すみません。清水さんの百面相が面白くて、つい眺めちゃいました」

寝起きの少し掠れた声に甘い顔。
もうこれ以上赤くなれない私の顔は、湯気が出るんじゃなかろうかと思うほど熱かったと思う。
意地悪なことを言う木村くんの視線から逃れたくて、布団を被ることで物理的に遮った。

少しの衣擦れの音の後、「清水さん、そのまま聞いてください」と真剣な色味を帯びた声が掛けられる。

「昨日はすみませんでした。勢いで襲ってしまって」

謝られた。
どうしよう、彼は後悔しているのだろうか。
なんか…泣きそう。
そうして涙の膜が零れそうになった時、布団ごと私の体を優しく包み込むように引き寄せられた。

「ずっと好きだったんです。男だって意識してもらいたくて…強引にコトを進めてしまったことは謝ります」
「強引なんて…思ってないよ」

ひょこっと顔だけ布団から出し、彼を仰ぎ見る。
逞しい胸に抱かれながら見上げる彼の顔は、先ほどの甘さを残しつつも真摯に気持ちを伝えてくれていることがわかって、次の言葉を期待して心臓がトクトクと速くなっていく。

「清水さん…今度俺とデートしてください」
「デート?」
「いろいろすっ飛ばしちゃったんで。ちゃんと順序守って口説きます」

本気で堕とすんで、覚悟しててください。
そう言われて、爽やかな顔でサラッと唇を奪っていく。
順序は? と思わずツッコミたくなったが、彼のペースに巻き込まれるのはひどく心地が良くて。
体の関係から始まってしまったし、まだ自分の気持ちを言葉に出来ていないけれど、それは彼に口説き落とされてからでも遅くないな…。
意地悪された意趣返しのつもりで、私はもうしばらくこの恋の行方を彼に委ねることにした。

-FIN-

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