いじわるな幼馴染と合コンで再会。最悪の誕生日から忘れられないエッチな夜に (ページ 2)
「家まで送る」
がしっと、肩を掴まれる。驚いてふりむけば、慶太が不機嫌そうな顔をしていた。
「……いいよ。一人で帰れる」
「はぁ? 今ふらついていただろうが」
「大丈夫だって。みんな待ってるよ? 戻れば?」
慶太にだけは弱っているところを見られたくない。
その一心で、私はその手を降り解こうとした。
しかし、さすがに男女差がある。いつのまにか、身長ものびて逞しくなった慶太を振り切ることはできなかった。
「だいたいどうやって帰るつもりだよ」
「電車で……駅まで歩いて」
「夜道にその服でか。バカかよ。襲ってくださいって言っているようなもんじゃねぇか」
いつの間に呼んだのか、私たちの前にタクシーが止まる。
「い、いいってば。タクシー高いし……」
「こういうときくらい甘えておけよ、可愛くねぇな」
可愛くない。
言われ慣れたその言葉が、やけに胸にささった。
言い返そうとすれば、涙が溢れそうで。
私は抵抗する事を諦めた。
*
「……どこ、ここ」
タクシーが向かった先は見覚えのないアパートだった。
慶太は平然と「俺んち」と答える。
「なんで? 駅に行くんじゃなかったの?」
「……少し寄ってけよ。お前、さっき全然楽しめてなかっただろ。誕生日なのに」
それをあんたが言うか、という気持ちと、慶太が私の誕生日を覚えていた、という衝撃に固まる。
慶太はばつが悪そうに顔をしかめた。
「忘れねぇよ……好きな奴の誕生日だぞ」
「……は?」
一瞬、何を言われているのかわからなくて聞き返す。
その瞬間、慶太は私の手首を掴み、アパートの中へ入った。
慶太の部屋は広くはなかったけれど綺麗に整頓されていた。
「そこに座ってろ」
私は大人しく椅子に座った。
そして
「嘘……」
テーブルの上に、小さなケーキが置かれる。
ケーキには「ハッピーバースデイ」とチョコレートでデコレーションされていた。
「環、誕生日おめでとう」
慶太はぽかんとしている私の顔を覗きこむ。
「……今日の合コンも、全部お前に合うための口実。……いい加減、気が付けよ。なんにも知らないで、そんな男が喜びそうなかっこしやがって……」
「わ、わかるわけないじゃん……ずっと私のこといじめてたくせに……」
「そ、れは……悪かったけど……。今すぐ許してくれなくていいから、チャンスはくれないか?」
「チャンス?」
「そ……これから今までの分、環のことめちゃくちゃ甘やかして、愛してやるからさ……お前の初めて、俺にくれよ」
私の両頬を包んだその手は、私の知らない男の人みたいで。
その真剣なまなざしにほだされ、ついこくんと頷いてしまった。
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