私が先輩の「いい思い出」になる時、切なさを通り越えた幸福を知る (ページ 3)
「リナちゃん?」
立ち止まられて、私は自分が泣いていることに気が付いた。
行かないで、という気持ちと、頑張って、という気持ちの間で揺れている。
「…ちょっと休もうか」
先輩が微笑んで、強く手を引かれた。
ホテルの部屋に入ってバッグを置いた瞬間、私の理性もどこかへ吹き飛んだ。
同じように荷物を置いた湊先輩の背中に抱き付く。
「リナちゃん?…ふふ」
体の向きを変えて湊先輩が抱きしめ直してくれる。
私は顔を直視できずに、先輩の胸に顔をうずめた。
「酔ってるね」
わかりきったことを言って、先輩は額にキスをした。
唇をせがんで少し背伸びしたけれどうまくかわされ、そのままベッドに押し倒される。
「さっきはありがとう。でも俺は行くって決めてるから、付き合ったりできないよ?」
わかってる。
たとえ気まぐれで卒業までの約半年を一緒にいてくれたとしても、先輩は自分の夢のためにあっさりとこの国を発つだろう。
そしてそうなると、私はきっともっと深く傷ついてしまう。
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