私が先輩の「いい思い出」になる時、切なさを通り越えた幸福を知る (ページ 2)
「先輩、あっちでも、がんばって…」
「いやいやリナ、先輩まだ行かないし!」
「おい湊お前のせいだぞ、なんとかしろ」
こみ上げてきた切なさをどうにかしようとアルコールを摂取しまくって、気付けば泣きながら告白していた。
みんなの前で。
恥ずかしすぎるけどもう取り返しがつかない。
涙を止めようとして、湊先輩を直視できなくて、ずっと手にしたグラスを見つめている。
「わかったわかった、ちゃんと送るよ」
湊先輩の声がして、ようやくそっちを見る。
いつも落ち着いてつめたい感じの先輩が、初めて少し困ったように笑っていた。
繁華街を抜けると夜の街のざわめきも少し落ち着いて、夜空の星が見える。
お会計でちゃんとお金を出したことは覚えているけれど、そのあとどうやってみんなと解散したかはうろ覚えだ。
「リナちゃんそんなべろんべろんでも、ちゃんとお財布出すんだね」
マナーですから、とかなんとか言いながら、話したいのはこんなことじゃないと思っている。
星がきれい。
ちょっと歩こうか、と先輩が言ったので、タクシーは拾わずにふらふらと歩いている。
湊先輩が自分の将来の夢について語り始め、相槌だけ打って隣を歩いていた。
どんな夢を語ったところで、あなたは行ってしまう。
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