恋人である社長が不在のときに、社長室で秘書の男性と…

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恋人である社長が不在のときに、社長室で秘書の男性と… (ページ 1)

「今日もお疲れ様です、あゆみさん」

 社長室を尋ねた私に声をかけてきたのは秘書の忍くんだった。

 社長秘書である彼は丁寧にお辞儀をしてくれたが、全く感情が込められていない動作と声。

 まるで私がこの場に来るのを良しとしていないかのように、ひどく冷めた目をしていた。

「お疲れさま、忍くん。ところで彼は?」

「社長は既に退社されましたよ。プライベートでご用事があったのでしょう」

「プライベートでの用事? なによ、それ。聞いていないわ」

 仕事での用事であれば秘書の忍くんにも、もちろん私にだって何らかの報告や相談があった。

 そのためのビジネスパートナーである私と、スケジュールを管理する秘書の忍くんがいる。

 プライベートでのことなら猶更、恋人である私にくらい連絡を入れてくれると思っていた。

 しかしスマートフォンを確認しても彼からの連絡はない。

「さぁ、詳しくは聞いておりませんが、社長にご用件でもありましたか? 私用でなければ私から連絡を入れておきますが」

 いくつものファイルを抱えた忍くんはポケットにしまい込んでいたスマートフォンに手を伸ばしている。

「大丈夫よ。忍くんには迷惑をかけないから。彼には帰宅してから相談するわ」

「しかし恋人であるはずのあゆみさんにも告げずに出かけるなど、なにかあるのでしょうか?」

 普段であればなんてことのない忍くんの言葉だったが、不意に気になってしまった。

 忍くんの言う通りだ。

 恋人の私に何も告げず、プライベートでの用事とは一体なんなのだろうか。

 人当たりがよく、若くして社長職を勤めている彼は付き合いと称して、今まで何度も夜の街に足を運んでいたことがあるくらいだ。

 付き合いとやらには毎回忍くんも同行していたからこそ、特に心配していなかった。

 だがその度に何枚も名刺が増え、彼のスマートフォンに見知らぬ女の人からの連絡が入っていたのを目の当たりにしてきた。

 仕事の一部だと割り切ってもなお、一度抱いてしまった疑念は簡単には消えそうにない。

「あゆみさん? いかがされましたか」

「忍くん、本当に……何も聞いていないの?」

「えぇ、何も。今日の業務は全て終えていますし、この後の予定は特にありません。明日はお休みですが……さすがにプライベートでの詳しい予定までは把握しておりませんね」

「そう、そうよね。わかったわ、ありがとう」

 彼に裏切られたわけではない。もちろん仕事上の付き合いだという可能性だってある。

 しかし秘書である忍くんに告げず、私に一言もないまま出かけるなど疑いは晴れない。

「あゆみさん、少しだけお時間いいですか?」

 突然かけられた言葉に戸惑っているうちに、忍くんが私のほうへとにじり寄ってきた。

 その間彼は怪しさすら感じてしまうほど、優しく微笑んでいる。

「最近社長とはご無沙汰気味ですか?」

「忍くんには関係ないでしょ! そんなこと……」

 思ってもない質問に私は声を荒げてしまうばかりだったが、彼の言っていることは間違っていない。

 私と、恋人である社長との性生活はここ数か月間何もないのだ。

「あゆみさんだって、本当は疑っているんじゃありませんか? たった今社長は、あなた以外の女性の元にいるのではないかと」

 私は何も言えなかった。

 口に出してしまうことで、現実味を帯びてしまうような気がしてしまって。

「図星、ですか?」

 忍くんの問いかけにただ頷いてしまう。

 首を横に振ればいいのに、恋人の言動を振り返ると何もないとは言えない。

「……社長のことなんて忘れてしまいましょうよ」

 腰を抱き寄せられ、瞬く間に忍くんの大きな腕に包まれた。

「社長以上にあなたの体を喜ばせてあげます。私はあなたのことを強く愛していますから」

 妖艶さが滲みはじめた忍くんの瞳から目を離せない。

 久しぶりに感じた男性の肉体に、この身が女としての本能のままに動いているようだった。

 口元に近づく彼の唇を何の躊躇いもなしに受け入れてしまう。

「ンッ……ッッ、アッ──ん、ぅ…」

 ざらついた男の人の唇の感触。

 ねっとりとした忍くんの舌が早くも咥内を蹂躙し、息つく間もなく私の舌は絡めとられた。

 そうしている間にも、彼のごつごつとした男らしい手が着実にスーツのボタンを外していく。

「ァァっ、ンッ……っふっ、ンン…」

 濃厚な口づけに、気が付けば私は忍くんに体を委ねてしまっていた。

 恋人であるはずの男が普段働いている室内で秘書である男に抱かれかけている。

 この状況に脳が大いに興奮し、自分からより一層深いキスを交わしていく。

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