目が覚めたら隣に馴染みの店のイケメンバーテンダーがいて…

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目が覚めたら隣に馴染みの店のイケメンバーテンダーがいて… (ページ 1)

「カイ君、次は、サイドカーをお願いします」

キリリと辛口のマティーニを飲み干して、私はバーテンダーのカイ君に声をかけた。

木曜日の夜。こぢんまりとしたオーセンティックバーには、私しか客がいない。

おかげで、のびのびと飲むことができる。

「今日はペースが速いね。リコさん、仕事で何かあった?」

若くして自分の店を持っているだけあって、カイ君はカクテルを作る腕だけじゃなくお客を見る目も良い。

私のような常連客の機嫌には、かなり敏感に反応してくれる。

「ないです。いいことは何も」

私は職場での出来事を思い出して、またイライラした。

使えない上司。無理を言う顧客。愚痴しか言わない同僚。

それぞれの身勝手さに腹が立つ。

何より、全部を上手く繋ごうとして、ただの八方美人になっている自分が許せない。

「でも、今は俺と二人きりで飲めてるから楽しいでしょ?」

猫のようなアーモンド形の目を、くしゃっと細めてカイ君が笑った。

「そうですね。イケメンバーテンダーと二人きりで美味しいお酒が飲めて楽しいです」

「リコさん、めっちゃ棒読みなんだけど」

「バレたか」

バレるよ、と言って笑いながら、カイ君はカクテルの準備を始める。

流れるような作業で、シェイカーにブランデー、ホワイトキュラソー、ライムジュースが注がれた。

さらさらの黒髪がシェイクのリズムに合わせて少し揺れる。

喋っている時の軽いノリとは真逆の、真剣な眼差しに仄かな色気が漂っていた。

「サイドカーです」

「ありがとうございます。イケメンバーテンダーさん」

「もういいって。ほんと、リコさんは意地悪なんだから」

「カイ君が可愛いから悪い」

じゃれ合うような会話が、本当はすごく楽しい。

この時間がなかったら、職場で泣きわめいてしまうかもしれないというほど、私にとってカイ君は極上の癒しだ。

「美味しい!」

「今日は俺の愛がいっぱい詰まってるからね」

「よし!じゃあ、いっぱい飲んじゃう」

ギムレットもコスモポリタンも、ニコラシカだって飲もう。私ははしゃぎながら、サイドカーを飲み干した。

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