仕事ばかりの彼のお腹に後ろから抱きついて―寂しさ吹き飛ぶ愛で満たされる (ページ 2)
「櫻子」
やっと義弘が私の名前を呼んでくれたけれど、今更それだけで許してあげるつもりもない。
甘えるようにぎゅっと抱きつく力を強めれば、動揺した気配が私にまで伝わってきた。
服越しに触れる義弘の腹部は男らしく程良い筋肉がついていて、何にもしていないのに少しどきどきする。
上がりかけた熱を逃がすように息を吐くと、巻き付いた私の腕を義弘の手が引き剥がした。
「ん、終わった?」
私の問いかけに義弘から返事は返って来ない。
怒らせたかな、なんて思った瞬間、手の甲に湿った温かさが触れた。
「やだ、くすぐったいよ」
感触だけで口づけを落とされたと気付いて、私はくすくすと笑いながらそんなことを口にした。
そんな私を意に介さず、じゃれるような口づけが柔らかい舌の感触に変わる。
「えっ、義弘?」
手の甲を這う舌の動きに驚いて声をかけても、義弘からは相変わらず返事が無い。
指と指の間を舐められて、思わず身体が跳ねた。
義弘の舌がつつつと指先へと移動し、また指の付け根へと戻っていく。
視界が遮られているからか、手に感じる生温さと時折耳に届くぴちゃりとした水音がやけに強く意識を刺激した。
やっと腕を解放された私の目の前で、椅子がぎしりと音を立てて回る。
床にへたり込んだ私を見下ろす義弘は、どこか淫靡な光をその目に湛えていた。
「えっと、あの」
「構ってほしいんだろ?」
そう言った義弘は、私を自分の膝の上へ誘導した。
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