夏祭りの花火の音を聞きながら、義父と結ばれた私・・・ (ページ1)

町内会の掲示板に、夏祭りの花火のポスターが貼られているのを、遥は目を細めて見た。

あれから1年経つんだと実感した。

ポスターを見ると学と結ばれたあの日のことを思い出す。

母と学が再婚したのは、遥が高校生の時だ。

学は、母が入院していた病院に勤めていて、母の主治医でもあった。

母は病弱で、入退院を繰り返し、頻繁に学と病院で会って話をする機会が増えていき、遥たちは親しい間柄になっていった。

学によく宿題を見てもらったり、学校の出来事を聞いてもらい、遥は少しづつ学へ好意を寄せていき、やがてそれが恋心だと気が付いた。

遥は実の父親の顔を知らない。

父親への憧れが、親子ほど離れた学への恋心と変化したのかもしれない。

でも、そんな恋心でも良いと思っていた。

遥の初めての恋だったからだ。

そんな時、母たちの再婚の話を聞き、正直ショックだった。

学は、血は繋がらないが戸籍上は父親になった。

再婚した後も、母は相変わらず入退院を繰り返していた。

こんな病弱な母と何故再婚してくれたのだろうかと、ずっと疑問に思っていたが、学は母をとても大切にしてくれた。

そして母は、一昨年の夏、夏祭りの花火を見ることなく病室で亡くなった。

母が亡くなった後、学は酷く落ち込んでいて、その酷く落ち込む姿を見て、本当に母のことが好きだったんだと遥は思った。

そして亡くなってから、学から母のことを聞かされた。

『私と遥ちゃんのお母さんとは高校時代、付き合っていたんだよ』と・・・

初めて聞かされる話だった。

2人は、高校を卒業後、大学へ行き、離れ離れになり、交際がうまくいかず別れてしまった。

再会したのは、母が病院へ来た時だったらしい。

『遥ちゃんを見ていると、あの頃を想い出すよ。君は、お母さんにそっくりだ』

それを聞くと、遥の心はズキーンと痛みを感じた。

いつまでもいつまでも母を想う気持ちに、偽りはないのだろうが、1年もの間ずっと塞いでいる学に少し腹も立っていた。

遥はここまで愛されている母へ嫉妬し、同時に羨ましく思っていたのだと思う。

昨年の夏祭りの日、いつまでも塞ぎ切っている学に言った。

『お願い・・・母への想いは続くかもしれないけど、私は、学先生の塞いでいる姿を見るのがとても辛いの。私は学先生が好き。私を見てほしい』

『遥ちゃんは私の娘だ。そんな風には見られない』

『学先生は、私をあの頃の母にそっくりだ。と言ってくれたでしょ?』

そう言うと、遥は学に抱きついた。

『ずっとずっと、学先生のことが大好きなの。高校生の頃から好きだった。学さんが母と結婚するって聞いて、私がどれだけショックを受けたのか分る?母が亡くなって1年経つのに、ずっと母を想って、塞いでいる姿を見るのがどれだけ悲しいか辛いのか、学先生に分かる?』

『学先生・・・学先生が好き』

そう言うと、遥は学の口にそっと唇を押し当てた。

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