最低最悪の夜を救ってくれたのはよく顔を合わせるスーパーの店員さんで…待ち遠しい週末 (ページ 2)
「てか、金曜の夜に一人でビールとかつらい」
「半額の唐揚げが悲し過ぎる」
「それな」
私のことを言っているのだと気づくまでに時間は要らなかった。
いつもなら無視できる言葉なのに、今日はスルーできない。
私は思わず三人を睨んでしまった。
「やばい。ばばあに睨まれてる」
三人は嫌な笑いを浮かべながら、私から距離をとった。
その隙にいつもの缶チューハイを選ぶ。
嫌な気持ちは残ったけれど、私はすぐにお酒コーナーを離れた。
買い物を終え、スーパーから出た瞬間、すみませんと声をかけられた。
オレンジ色のエプロンをした中年の男性が、変にニコニコと笑っている。
「ちょっと、事務所の方にいいですか?」
「え?なんで、ですか?」
「精算されてない商品をお持ちですよね?」
「はい?持ってないですけど」
意味が分からないまま、私は男性と一緒に事務所に向かうしかなかった。
「すみません。カバンの中を見せて頂けますか」
中年の男性が私のトートを視線で指す。どうやら万引きを疑われているらしい。
「いいですよ」
全く心当たりがないから、私はすぐにトートの中身を出した。
「え…これ…」
化粧ポーチと財布の間に、開封していないリップクリームがある。
「これ、精算されてませんよね?」
中年の男性が静かだけど低い声で言った。
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