騙されてAV女優になった私。失敗ばかりしていたら、監督自らの演技指導が始まって (ページ1)

「あっ、だめ!」

「だめじゃないだろ?こんなにビチョビチョにして。本当は触られて嬉しいんだろ?」

「いやっ!離して!」

「カットー!」

 今日、四度目のカットがかかる。私のガーターストッキングを撫で上げて股間をまさぐっていた男優がチッと舌打ちして、密着させていた体を離した。

「アミ!おまえ、なにやってんだ!感じてる女の顔じゃない、それでも女優か!」

 私は唇を噛む。
 騙されて無理やりアダルトビデオに一本出演させられただけの素人だった私を、勝手に天才だって持ち上げたのは、あんたじゃない。

 茂木監督は手にした小型のカメラを投げ捨てるように乱暴に机に置くと「十五分、休憩!」と怒鳴って出ていった。

 電車を模したこの撮影所をレンタルするために費用の大半を使い切ってしまったため、スタッフは少ない。茂木監督のほかには照明係とメイクの女性と男優、そして私だけ。カメラマンさえいなくて茂木監督が自ら撮影している。

 アダルトビデオ業界では名の知れた監督らしいけど、私にとっては、私を騙した男たちと同罪の浅ましいヤツとしか思えない。

 スタッフと男優は茂木監督の後について撮影所を出ていった。私は偽物の電車のシートに座り込む。

 今回の作品は、OLが痴漢される人気シリーズの一本なのだという。これがヒットすれば私もAV女優として有名になれるらしい。
 
 
 ふっと自嘲の笑みが浮かんだ。これ以上AV女優として有名になって、どうなるというのだろう。
 
 
 そもそも、私はなりたくてAV女優になったわけじゃない。二十歳の頃、街でスカウトされてモデルになるつもりで契約書にサインをした。その契約書のせいで服を着るモデルではなく、服を脱ぐ女優になってしまった。
 
 
 その後に勤めた会社で、私がアダルトビデオに出演した過去がばれて辞めざるをえなくなった。不況のせいでまともな仕事は見つからず、仕方なくこの世界に戻ってきたのだ。

「アミ」

 茂木監督に呼ばれて顔を上げた。

「おまえ、セックスで気持ち良くなったことないだろ」

 片手に缶コーヒーをぶら下げて、茂木監督は電車のセットに乗り込んできた。大股に近づいてきて、私の隣にどっかりと座る。

 いつも自信満々で、体つきも大きな茂木監督が隣にいると、自分がちっぽけな存在になったように思ってしまう。
 茂木監督はコーヒーの缶を床に置くと、私の肩を抱いて引き寄せた。

「何するんですか!」

「気持ち良くしてやるよ」

 突然のことに驚いて、抵抗しようと茂木監督の胸に手をついて押したが、びくともしない。茂木監督は私が着ているスーツの肩をずらして、片手で器用にブラウスのボタンを首元から三つはずした。

 茂木監督の顔が迫ってくる。キスされそうになって、私は首をそらして避けた。隙のできた首筋に茂木監督が噛みつくようにキスした。

「やめてください!」

 舌でベロリと首筋を舐め上げられる。

「そんなこと言って、感じてるんだろ」

 台本にあるセリフだ。ああ、これは芝居の稽古なんだなと安心して力が抜けた。
 私は次のセリフを口にする。

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