秘密のおじさん。

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秘密のおじさん。 (ページ 1)

学校からの帰り道。

わたしは必ず、ある場所に寄り道をしていました。

家の近くの、森林公園。

地味でクラスに馴染めなかったわたしは、公園のベンチに座ってぼんやりしているのが唯一の息抜きでした。

これは、そんなわたしの忘れられない出来事です。

* * * * * *

それは、次第に肌寒くなってきたある秋の日のことでした。

この頃すでに、推薦入試で大学に進学することが決まっていました。

もう卒業も間近だというのに、ろくに学校生活を楽しめないまま高校時代が終わろうとしています。

その日もいつものように公園に寄り、ものぐさにスクールバッグを置いて、ベンチに腰掛けました。

「はぁ…。」

「もう疲れちゃった…。」

誰に言うでもなく小さく呟いて、虚ろな目で、足元の落ち葉を眺めていました。

すると、痩せたサラリーマン風の中年男性が声をかけてきました。

「ちょっとキミ、いつもこの時間、ここに座ってるでしょう。辺りはもう暗いじゃないか。こんなところに、独りでいたら危ないよ。それとも…何かあったのかな?」

こんな風に人から心配されたのは久しぶりです。

私はスッと顔を上げ、震えながらおじさんの目を見つめました。

「ご…ご免なさい。でも、私もう、どうなってもよくて。毎日辛くて。クラスで浮いてるし…。」

見ず知らずの人を前にしているというのに、口から零れた自分の言葉が自分の心を八つ裂きにしてしまったかのような気持ちは止めることができず、今にも泣き出してしまいそうでした。

するとおじさんは、困ったような顔をして、目の前にしゃがみました。

そして、わたしの髪をそうっと撫でます。

「馬鹿なこと言ってないの。まだ10代でしょう。おじさんみたいになったら手遅れかもしれないけど。まだキミには、未来があるんだから。ね?」

髪を撫でるおじさんの指が、わたしの額をかすりました。上半身がビクンッとなりました。

男の人に触れられた経験のないわたしは、ただ黙って固まっていることしか出来ませんでした。

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