秘密のパーティで出会った謎の男性に、初めての快感を教わる私。指先だけでとろけそう (ページ 2)

「え、あの……」

 少し返答に詰まってしまう。

「わ、私、こういうところに、あまり慣れてなくて」

「そうなんだ」

 彼は微笑んだ。

「同じだね」

 そして手を差し出す。

「少し外へ出ないか? ここは暑い」

 普段ならけしてこんな誘いに乗りはしなかっただろう。壁際で眺めていただけでも、やはりこの場の熱気に飲まれ、興奮していたのだろうか。

 桜は返事もせずに、その手を取った。

 ・・・・・

 屋外の、人目につかない場所に連れていかれ、彼と唇を重ねた。

 互いに仮面をつけているせいか、自分でも驚くほど大胆な行動がとれる。

 彼のキスも愛撫も拒まなかった。

 ただ、素顔を隠す仮面に手をかけようとした時だけ、顔を背ける。

「だめ」

 それに、仮面越しでも彼のこの瞳の美しさはわかる。黒い宝石のように輝き、謎めいて、見つめられるだけですべてを忘れてしまいそうだ。

「じゃあ、名前を教えてくれる?」

 耳元でささやかれる甘い声。低く、柔らかく、どこか淋しさや切なさを感じさせる。まるでビロードの手触りのよう。

 この声にささやかれると、どんなことでも許してしまいそうだ。

「……桜」

「可愛い名前だね」

 ふふっと、彼は笑った。

「俺は、伶」

 ――本当かしら。

 こんな場所で本名を名乗る必要はない。むしろその場限りの偽名のほうがふさわしい。

「伶……」

 小声で呼んだ彼の名前は、まるで砂糖菓子のように甘く感じた。

 ふたたびキスを奪われる。

 重ね合った唇が擦れ、熱っぽい疼きが生まれた。わずかに吐息をついた隙に、彼がそっと忍び込んでくる。熱く蕩けるような舌先が自分の中をかき乱す。なめらかな粘膜をそっとくすぐられると、身体中にさざ波のようなふるえが走った。

 彼はどんどん深く侵入してくる。自分ですら触れたことのない場所に、他者が触れる。そう考えると、ひどく淫らなものに思えてくる。生まれて初めての感覚に、頭から飲み込まれていく。

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