秘密のパーティで出会った謎の男性に、初めての快感を教わる私。指先だけでとろけそう (ページ1)

 ――一度でいい、冒険がしてみたかった。

 いつも、誰かに言われるがまま、流されるように生きてきた。

 進学も習い事も、親の言いつけどおり。就職も、結婚すら、周囲の人に勧められるまま、なんとなく承諾してしまった。相手の男のことを良く知る努力すらしないまま。

 今まで人の勧めに従ってきて、それでまあまあ上手くいっている。人生なんてこんなもの、むしろ私は幸運なほう。

 いつも、そう自分に言い聞かせてきた。

 だからこそ、最初で最後の冒険がしてみたかった。

 その夜、桜は初めてひとりきりで夜の街へ出た。

 噂で聞いた、仮装パーティーに参加するために。

 仮装して一晩中浮かれ騒ぐこの手の催事は、ここ何年かで日本にも定着しつつある。

 会場はすでに奇妙な姿の人々でごった返していた。

 単に仮面で顔を隠しているだけの者もいれば、童話などの登場人物に扮している者、素顔もわからないほど厚化粧の者など、一人として同じ姿の者はいない。

 ――すごい……。

 茫然と目の前の人の群れを見つめる。

 熱狂、陶酔、全身を揺さぶるアップテンポの音楽。参加者たちはみな、踊り、はしゃぎ、奇声をあげる。この場にいる誰もが、世間の常識やしがらみをかなぐり捨て、一時の狂乱に酔いしれていた。

 さすがに、その渦の中へたったひとりで飛び込んでいく度胸はない。桜は壁際に佇み、目の前の宴を眺めていた。

 ――それで、充分。

 その、はずだった。

 ふだんの自分なら、想像もつかないような場所へ来た。しかも友達にも家族にも、誰にも内緒で。

 手持ちの服の中で一番派手なもの。顔を隠す仮面。それだけで、充分な冒険だ。

 この空気を存分に楽しんだら、おとなしく日常へ帰ろう。今夜の冒険は、きっと一生の思い出になるはずだ。

 そう思っていたのに。

「踊らないの?」

 突然、声をかけられた。

 目の前に現れたのは、見知らぬ若い男。

 桜と同じように普段着に近い服装に、素顔だけを黒い仮面で隠している。

 しなやかな身のこなしは、どこか美しい猫を思わせた。

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