薄暗い書庫、そこが私たちの逢瀬場所―…本の森で交わされる優しい悦楽

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薄暗い書庫、そこが私たちの逢瀬場所―…本の森で交わされる優しい悦楽 (ページ 1)

国立大学の図書館は立派な造りで、蔵書もかなり多い。

書庫も広く、さながら本の森。

私は司書として、ここで働いている。

地味な仕事で、お給料もそれほど高くないけれど、大好きな本に囲まれて幸せ。

そんな私の毎日が、変わり始めたのは数か月前のことだ。

「リコさん、三島由紀夫を読んでみたいんだけど、どれが読みやすいですか」

本の整理をしていると、カイ君が話しかけてくるようになった。

「夏子の冒険が読みやすいと思いますよ」

カイ君はこの大学の学生で、授業が午前中だけの水曜日に必ず図書館に来る。

人懐っこい笑顔と礼儀正しい態度で、図書館のスタッフみんなに好かれている。

だけど、私がカイ君に会えるのを待ち遠しく思うのは、もっと違う理由。

「借りてみます。ありがとうございました」

カイ君は私が勧めた本を借りて、純文学のスペースを出ていった。

これは私への合図。

時間差で論文が置いてある書庫に向かう。

平日の午後、授業の時間帯。

薄暗い書庫には誰もいない。

古い施設だから監視カメラもない。

私とカイ君の逢瀬にはぴったりの場所。

「リコさん」

小さい声が私を呼ぶ。

書庫の奥の奥。

書架の間にカイ君がいた。

「今日も綺麗だね」

カイ君はうれしそうに目を細めて、私を抱きしめる。

「誰にも見られなかった?」

念のために確認したら、カイ君がもちろんと頷いた。

「リコさんの迷惑になることはしたくないもん」

「でも、えっちなことはしたいんだ」

「だって、ここでするの興奮するじゃん」

リコさんが。

と耳元で囁かれ、それだけで腰が砕けそうになる。

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