ぽっちゃりを通り越しちゃってるアラフォー女子のハッピー初体験

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ぽっちゃりを通り越しちゃってるアラフォー女子のハッピー初体験 (ページ 1)

「え!?課長が?交通事故に巻き込まれた?今しがた?」

突然の電話に朝から社内が騒然となった。

「容態は?命に別条なしですね?ああ、よかったぁ、入院先は…」

「あ…と…とにかく、今日のプレゼンは次長に行ってもらうから」

課員はケガをした課長の穴埋めに奔走し、午前中は仕事にならなかった。

「これじゃあ、今晩の送別会は中止にするしかないなあ。飲んでる場合じゃないよ」

「しかたないですね。あ、智恵美さん、今日の幹事だったよね?お店、キャンセルお願いね」

智恵美は心底がっかりした。

今日は自分が計画した圭太の送別会。

来週から海外に赴任する圭太と最後の飲みニケーションになるかもしれないのに。

圭太は30代前半の後輩だが、営業センスや語学力に恵まれ、本人の希望もあって、大抜擢といえる念願の海外支社に異動する。

地域採用枠で一般事務職の智恵美とは段違いの雲の上の人なのだが、気さくでちょっととぼけたキャラクターもあり、好感度の高い男性だった。

(あ~、あんな素敵な男性に愛されたいよ…。彼氏いない歴=年齢のまま、あと何年かで40歳になっちゃうよ…、とりあえず痩せなきゃ…)

智恵美はこんな思考のループにずっと囚われている。

幼いころは普通体型だったが、ストレスを感じやすいくせに人一倍がまん強い性格のせいか、中学時代から太り始め、体重は3桁には届かないものの、かなりのぽっちゃり体型をとおしてきた。

背丈は人並みだし、目元もパッチリしているので、「痩せればかわいいもんね」などと妙な慰め方をされたり、「智恵美と並ぶと自分が細く見えるから助かるわ」などと変に重宝がられたりで、コンプレックスは深くなるばかりだ。

そのため恋愛に対して極度に臆病になってしまい、いまだに恋人と言える異性は現れない。

いろいろなダイエットにも挑戦しているが、一時的に痩せることはあっても、元来食べることが大好きだから、しばらくするとリバウンドして元に戻ってしまうのだった。

「今日はせっかく準備してもらったのにすごく残念です。こんな状況だけど、後でこっそり飲みに行きませんか?なんか最後の日なのに何もないの物足りなくて」

混乱がようやく落ち着いたころ、圭太は智恵美に声をかけた。

「ありがとう。でも…、実はキャンセルしたパブレストランに申し訳なくて、今晩謝りに行こうと思ってたから、どうしようかな…」

「あ、それ僕も一緒に行きます。謝るだけじゃなく、ぜひ、そのお店で飲みましょう。お客として行った方がお店も助かりますよ」

「それもそうね。じゃあ、お供をお願いしようかしら」

定時を少し過ぎた頃、二人は周囲にバレないよう別々に退社し現地集合した。

これまで、職場の複数人では何度か飲んだことはあったが、2人きりは初めてだった。

しかし、最後ということもあり、いつになく話が弾み、自然に恋愛の話題になった。

「前に飲んだ時は、もう結婚を考えてる彼女がいるって話題になってたけど、外国に行ったら彼女が寂しがるんじゃないの?」

「あ…彼女はもう別れました…。1年くらい前の話です。なんか二股かけられちゃってて…」

「ごめんね。嫌なこと聞いちゃったね」

「いえ、平気です。それより智恵美さんの彼氏のこととか知りたいです」

「私なんか全然いいことないよ。こんなに太ってるし、男性に相手にされないよ~」

「そんなことないですよ。僕からすれば、失礼な言い方だけど、ちょうどいいぽっちゃり具合だと思います。だいたい日本の芸能人の女性とか、みんな痩せすぎ。ガリガリで可愛くないですよ」

「へ~、うれしいこと言ってくれるね。でも、正直、私は男性とお付き合いしたこととかないし、結婚だって、年も年だからもう無理じゃないかな~って半分諦めてるよ…」

ここでお店からラストオーダーを告げられた。

予約をキャンセルしたすぐ後に別の予約が入ったとのことで、智恵美たちは1時間だけという条件で入店したのだった。

「おいしかったです。ここは人気店なんですね。お腹はいっぱいだけど、まだ話し足りないですね」

「そうね、もう少しだけ飲みたいね」

「よかったら、この近くのホテルの展望バーに行ってみませんか?夜景もいいですよ」

「夜景かあ、きれいだろうなあ。でも、私はそういう場所は似合わないから遠慮しようかな…」

「行ってみて入りづらかったら、また考えましょう。お願いします」

慎重な智恵美とは対照的に圭太は行動的だった。

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