シャッター音が響く度、抑え付けていた欲望はゆっくりと滲み出す

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シャッター音が響く度、抑え付けていた欲望はゆっくりと滲み出す (ページ 1)

高校生の時に、初めて中古の一眼レフを手にした時から、私の夢はプロの写真家だった。

だけど、二十代の頃は何も上手くいかなくて、プロなんて夢のまた夢だった。

ニューヨークで修行して、日本に帰ってきて仕事がもらえるようになったのはここ数年。

三十路も半ばに差しかかり、夢を諦めなくてよかったと思う。

だからこそ、

数十秒前、目の前の青年が自分の体を武器に、夢を叶えたいと言い放った時、反応が遅れてしまった。

「俺、ニューヨークコレクションに出たいんです」

私をスタジオのソファーに押し倒して、上半身裸の青年は瞳の中で炎を揺らす。

名前は確か、カイと聞いた。25歳。身長は188センチ。

履歴書はあまり見ない主義だから、彼がどんな人間なのかはまだ知らない。

ただ、目の前にある体は極上だ。

繊細な黒髪、細い鼻梁、切れ長の目。そして、滑らかな肢体。

どこをどう見ても美しい男。

「なんでもするし、なんでもしていいので、俺を推薦してください」

そんな美しい男に、まさか自分が枕営業をかけられるなんて思ってもみなかった。

今日は雑誌グラビアのカメラテストのつもりだったから、スタジオには私と彼しかいない。

考えてみれば、絶好のチャンスだ。

「私はしがないフォトグラファーで、ファッション業界にコネなんてないよ」

ゲイのデザイナーと男性モデルのあれこれは、よく耳にするけれど私には関係ない話だ。

「嘘つき。リコさん、Ton nomのフレッドとは親友でしょう?」

「…よく知ってるね」

確かにフレッドは親友だ。

私が推薦したモデルならすぐ使うくらいには信用されている。

でも、それは私が枕営業にほだされる人間ではないと思われているからで。

「推薦して欲しいなら、きちんと写真を撮らせて」

私の毅然とした声がスタジオに響いた。

気圧されたのか、カイが体を離した。

その顔を一枚、カシャンと撮る。

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