いつものコーヒーショップで見かける彼。その彼と夜のバーで出会ったら……。

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いつものコーヒーショップで見かける彼。その彼と夜のバーで出会ったら……。 (ページ 1)

彼を初めて見かけたのは、毎朝立ち寄るコーヒーショップ。

スタイリッシュな三つ揃えのスーツ。平均を大きく超える長身。

「カフェオレを一つ」

彼の注文はいつも同じ。

見ているだけでも目の保養。話をすることなんてない。それでも、彼を見かける日はなんとなく気分も上がった。

そんな彼とまさかまた会うなんて――。

繁忙期を乗り越え、体はもうくたくた。家で夕飯を作るのが面倒で、佳代はお気に入りのブックバーに寄った。

繁華街の片隅にひっそりとあるバーは壁一面が本棚で、お酒を飲みながら読書も楽しめる。ご飯もおいしいので、佳代のお気に入りの場所だ。

生ハムとチーズの盛り合わせに、ジントニック。

一杯だけ飲んで帰ろう。

――そう思っていた。からんとドアベルが鳴って入ってきた彼を見るまでは。

(あ、コーヒーショップの……)

仕事帰りなのだろう。朝見かける時よりも少し疲れて見えた。

彼が隣のスツールに座る。

佳代はドキッとした。

「一人?」

「え、あ……はい」

バーテンダーにマティーニを頼んだ彼にそっと問いかけられ、佳代はびっくりしながら頷いた。

「君、……朝、コーヒーショップで会うよね?」

「え?」

「あれ、違った?」

「ううん。……ち、違わないけど……」

まさか彼も佳代のことを覚えていてくれるなんて思わなかった。

「かわいい子だなって思ってた。……雅紀だ。よろしく」

「佳代です。よろしく」

雅紀は話し上手だった。外資系の営業だというから、それも当たり前なのかもしれない。

一杯だけと思っていたのに、カクテルを二杯、三杯とおかわりして、雅紀と他愛もないことで笑いあった。

「ねぇ、もう少し一緒にいたい」

そっと囁かれた言葉に、佳代は思わず頷いていた。

肩を抱かれてバーを後にする。二人でタクシーに乗り、着いた先はラブホ――ではなく、ちゃんとしたシティホテルだった。

「どうかした?」

手慣れた様子でチェックインした彼と高層階の部屋に入った佳代は少し戸惑っていた。

「……ううん。なんか、慣れてるんだなと思って……」

所在なさげに立ち尽くす佳代に、雅紀はにこりと微笑んだ。ネクタイをぐいっと緩めた彼が抱きすくめる。

「聞こえる?」

抱きしめられて彼の匂いに包まれる。控えめなコロンの香り。ドキドキと脈打つ彼の心臓の音がスーツのジャケットごしに聞こえてくる。

「……これでも緊張してるんだ」

頭を撫でる手がくすぐったかった。

顎をとられて、ぐいっと上を向かされる。吐息に混ざって微かにお酒の香りがした。

「……んっ、……ぁ」

舌を絡めとられて息が上がった。歯列をなぞられ、上顎をくすぐられる。

「ベッド、行こうか」

雅紀は膝ががくがくと震えだした佳代を抱き上げ、キングサイズのベッドに寝かせた。

ジャケットを脱ぎ捨てる姿をベッドに横たわりながら、ぼーっと見つめる。

(私も……脱いだ方が、いいのかな……?)

アンサンブルのカーディガンにかけた佳代の手に雅紀の手が重なった。

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