「おまけに家に連れ込むだなんて、ねえ?」誤解が招いた送り狼 (ページ1)


「はぁ、綺麗な星」

視界一面に映るのは、真っ暗な空とちかちかと光る星々だった。

見上げていた視線を戻すと隣にいた彼と目が合って、少し恥ずかしくなる。

卯月さんはへにゃりと眉を下げながら、謝罪の言葉を口にした。

「すみません、こんな時間になってしまって」

「私が言いだしたことですから」

彼の仕草にきゅんとしながら、私は口元に笑みをたたえてそう返す。

現在進めているプロジェクトに気になる点があると言ったのは卯月さんだけれど、その残業に付き合うと言いだしたのは確かに私だった。

「むしろ、卯月さんと二人っきりで得したかも」

「はは、またそんな……」

軽い私の口ぶりを、卯月さんは笑ってごまかす。

それでも、俯いた彼の耳がはっきりと赤く染まっていて、私は思わず湧き上がるにんまり笑いを押し殺した。

卯月さんは私の直属の上司。
謙虚で優しい人柄と確かな腕で、この会社の中でも上司にしたい人ナンバーワンの逸材だ。

そんな卯月さんの下に配属されたのは、残念ながらこうして彼への好意をあけすけにしては困らせるという、不真面目な私だったのだけれど。

それでも仕事上の相性はいいらしく、二人で残業をしているとどんどん加熱してしまい、いつの間にかこんな時間になっていた。

送りますという卯月さんからの申し出を断る理由もなく、私は喜んで受けたのだった。

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